今回から「搭載編」に入る予定でしたが、あと1本だけ「羽田旅客編」を追加させてください!
すみません…
未だにわすれられない、ある年の「3月31日」の出来事です
その日は春先にしては結構暖かい日で、私もジャケットを着ずに半袖シャツで仕事をしていました
以前にも書きましたが、春先の成田空港は風向きが悪くなりやすく、ダイバート(目的地外着陸)が発生しやすい時期でもあります
この日もやはり風向きが悪く、とある航空会社(赤い会社)のグアム発・成田行きの便が、羽田空港へダイバートしてきました
最初は「給油をしてから成田に向かうのだろう」と思っていたのですが、中々出発する気配がありません
そうこうしているうちに、結局その便は羽田で運航打ち切りが決まってしまったのです
グアム線は片道3時間半ほどの道のりです
通常、乗務員はグアムで降機することなく、そのまま日本まで引き返してきます
しかし、乗務員には「duty time(連続勤務時間)」の上限が厳格に定められています
成田着陸できず羽田へ向かった時点で、彼らはすでにかなりの時間を乗務していました
そのため、成田へ再出発するためのタイムリミットがほとんど残っておらず、いわゆる「タイムオーバー(勤務時間切れ)」となり、羽田で打ち切りを余儀なくされたのです
ここからが大変な現場の始まりでした
私たち現場職員は管理職の指示のもと動くのですが、出された方針は「成田空港までの貸切バスを手配し、お客様をお送りする」というもの
方針が決まれば、あとは急ピッチに準備を進めるだけです
通常は羽田に到着しない国際線のため、まずはCIQ(C:税関、I:入国管理局、Q:検疫)へ連絡して事情を説明し、特例で降機・入国するための許可を取り付けます
受入体制を整えたうえでお客様に降機いただくのですが…本来降りる予定のなかった空港へ降ろされたお客様からは、当然様々なご意見を頂戴することになります
長時間機内に閉じ込められていた苛立ちもあり、かなり厳しいお言葉を頂くこともありました
しかしそこはプロとして、一人ひとりに丁寧に対応し、事情をご説明しながらバスへと誘導していきました
ですが、お客様の目的地は全員が「成田」というわけではありません
「羽田に着いたのなら、成田に戻らずそのまま自宅に帰りたい」という方もいらっしゃいます
そうした方々へ個別の案内を続けている中、今でも深く印象に残っている一人のお客様がいらっしゃいました
冒頭にも触れましたが、この日は「3月31日」です
そのお客様のお話しを伺うと、なんと「翌日が入社式」とのこと
しかもご自宅が、三重県の津市…
お話しを伺った時点(夜間)では、すでに三重県まで当日中にたどり着ける公共交通機関はすべて終了していました
このままでは、人生に一度きりの大切な入社式に出席できなくなってしまいます
私はすぐに当日の管理職へ事情を説明しました
すると、管理職から返ってきたのは驚くべき一言でした
「今すぐ、タクシーのガソリン車を探してこい!」
一瞬、「えっ??」と耳を疑いました
LPガス車は多いタクシーでは長距離移動の途中でガス欠になるリスクがある為、ガソリン車を指定したのです
管理職は続けてこう言いました
「津までのタクシー代は会社で全額負担する。ただ、一旦はお客様に立替のお願いをして了承をもらってくれ」
急いでお客様に事情をお伝えしたところ、ご了承いただくことができました
ご了承を得た旨を管理職に報告し、私はすぐにタクシープールに行きガソリン車探しを始めました
しかし、やはりほとんどがLPガス車で、ガソリン車がなかなか見つかりません
なんとかガソリン車を見つけたものの、次の関門は「三重県の津まで走ってくれるかどうか」です
何台ものドライバーさんに断られましたが、粘り強く交渉を重ね、ついに引き受けてくださるタクシーが見つかりました
お客様を無事にタクシーへご案内し、三重へと送り出すことができました
後日人伝に聞いた話ですが、そのお客様は無事翌朝の入社式に間に合ったそうです
気になるのタクシー代は…かなりの高額になったそうですが、一時立て替えていただいた後に会社で全額清算が行われました
私自身、羽田で勤務している中で、これほど思い切った判断ができる管理職に出会ったことがなかったため、非常に鮮烈な記憶として心に残っています
「こんな管理職になれたらな…」と思いを馳せながら、私自身も現在管理職を務めています
しかし、当時の管理職と同じ判断が今の自分にできるだろうかと問われると、「そこまでは思いきれるだろうか…」と今でも身が引き締まる思いがします
そんな私が理想とする管理職(上司)像については、また別の機会にお話しできればと思います
次回からは「搭載編」をお届けします(たぶん…)
それでは、また次回!
※これは今から20年以上前の出来事ですので、「現在も同じ対応ができるか」と言われると、正直難しいと思います。今は社内ルールやコンプライアンス面での制限も多く、現場の一瞬の判断でこれほどの金額を動かすのは限りなく不可能に近いです。私自身、現在の立場で同じ場面に直面したとしても、当時の上司のような即断即決はできないでしょう。時代の違いを感じさせる「古き良きエピソード」として、温かい目でお読みいただければ幸いです。

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